「塾にはきちんと通っているのに、なかなか成績が上がらない」
ご家庭から指導のご相談を受ける中で、よく聞くお悩みの一つです。
もちろん、塾に通っても成績が上がらないというわけではありません。塾の授業が合って、大きく成績を伸ばす子もたくさんいます。
ただ、現在の学力に不安がある子や、勉強が苦手な子ほど、塾の授業だけではなかなか成果につながりにくいことがあります。
その大きな理由は、「一度説明を聞いて理解しただけでは、一人でできるようにはならないから」です。
「その場で分かった」と「自分でできる」は違う
授業中に先生の説明を聞いて、「分かった」「なるほど、そうやるのか」と、その場では理解できたように見えることがあります。
しかし、翌日に同じ問題を一人で解かせてみると、手が止まってしまう。これは決して珍しいことではありません。
特に勉強が苦手な子の場合、次の4つの段階の間にはかなり大きな差があります。
- 説明を聞いて理解する
- 自分で問題を解く
- 数日後にもう一度解ける
- 数字や問われ方が変わっても解ける
授業を受けた直後には1や2までできていても、数日たつと忘れてしまうことがあります。
一度できた問題でも、数字や聞かれ方が少し変わると分からなくなることもあります。
こうした子には、理解した後の「繰り返し」が必要です。
勉強が苦手な子ほど、定着までに必要な回数が多くなる
もともと勉強が得意な子は、一度説明を聞けば要点をつかめたり、数問練習すれば解き方を身につけたりできます。
さらに、初めて見る問題でも「これは前にやった問題と似ている」と、自分で以前の学習内容と結びつけることができます。
一方、勉強が苦手な子はそう簡単にはいきません。
一度できるようになったと思っても、翌日には忘れている。
同じ問題なら解けても、少し形を変えると止まってしまう。
つまり、定着するまでに必要な練習の回数そのものが多いのです。
ところが、塾には授業の進度があります。一人の生徒が完全にできるようになるまで、同じ内容を何度も繰り返してから次へ進むことは、仕組み上なかなかできません。
結果として、
- 「授業は毎週受けている」
- 「宿題もしている」
- 「それなのに成績が上がらない」
という状態になってしまうことがあります。
「すぐ忘れる子」には、忘れる前提で指導する
勉強が苦手な子を指導するとき、私は「一度教えたから、もうできるはず」とは考えません。
昨日できたことを今日忘れていても、それほど驚きません。
忘れているなら、もう一度やります。
また忘れたら、もう一度やります。
大切なのは、忘れない子にすることではなく、忘れることを前提にして、定着するまで繰り返すことです。
その中で、
- どのくらい間隔を空けると忘れるのか
- 毎回どこでつまずくのか
- どういう聞かれ方をすると分からなくなるのか
を見ながら、問題の内容や出すタイミングを調整していきます。
一度できたから終わりではなく、数日後、さらにその後にも確認することが大切です。
「応用問題ができない」理由も一人ひとり違う
「基本問題はできるのに、応用問題になるとできない」という相談もよくあります。
ただ、これも単純に「応用力がない」で終わらせてはいけません。
応用問題ができない原因には、さまざまなものがあります。
- 基本事項そのものが十分に定着していない
- 問題文から必要な情報を取り出せない
- 何を聞かれているのか正しく理解できない
- 以前に習った内容と結びつけられない
- どの解き方を使えばよいか判断できない
- 計算力が弱く、考えるところまでたどり着かない
同じ「応用問題ができない」という状態でも、原因は子どもによって違います。
ですから、必要な対策も違います。
基本問題を繰り返した方がよい子もいれば、問題文の読み方から練習した方がよい子もいます。
一問ずつ、「なぜこの問題ができなかったのか」を見ていく必要があります。
成績が上がらない原因は、今の単元にあるとは限らない
勉強ができない原因は、単純ではありません。
算数や数学なら、今習っている単元ではなく、半年、一年前に習った内容が原因になっていることもあります。
英語なら、現在形や過去形を勉強しているのに、実はbe動詞と一般動詞の区別から曖昧だったということもあります。
国語でも、文章読解以前に、語彙力や一文の構造の理解につまずいていることがあります。
そのため、「この単元ができないから、この単元をもう一度説明する」だけでは解決しない場合があります。
できない原因を探し、その原因に合わせて練習内容や量を変える必要があります。
一人の子に合わせ続けることは、塾では難しい
これは塾の先生の指導力の問題というより、仕組みの問題です。
集団授業では、全体の授業を先へ進めなければなりません。
個別指導塾でも、決められた教材やカリキュラムがあるため、一人の生徒について何か月も前の内容まで戻り、完全に定着するまで何度も繰り返すことには限界があります。
特に学力が低い段階にいる子ほど、「今日の授業を理解すること」以上に、「どこで分からなくなったのかを見つけること」の方が重要になる場合があります。
- 必要であれば前の学年まで戻る
- 同じ内容を何度も繰り返す
- できるようになった後も、数日後、数週間後にもう一度確認する
- 少しずつ問題の形を変えながら、自分で判断できるようになるまで練習する
こうした対応は、一人ひとりを見る指導だからこそやりやすい部分です。
「分かりやすく教える」だけでは成績は上がらない
家庭教師として指導をしていて感じるのは、勉強が苦手な子ほど、単に分かりやすく教えるだけでは足りないということです。
大切なのは、次の2つです。
- なぜできないのかを見つけること
- できるようになるまで、その子に必要な方法と回数で繰り返すこと
一度で覚えられないなら、何度でもやればいい。
前の学年に原因があるなら、そこまで戻ればいい。
問題の形が変わるとできないなら、少しずつ形を変えながら練習すればいい。
子どもによって「できない理由」は違います。だからこそ、必要な指導も一人ひとり違います。
塾に通っているのに成績が上がらない場合、勉強時間をただ増やす前に、
「この子は、どこで、なぜできなくなっているのだろう」
というところから考えてみることが大切です。
私の指導では、こう対応しています
一対一の家庭教師であれば、その子の理解度に合わせて、必要なところまで戻ることができます。
授業中にできなかった問題だけを見るのではなく、その原因がどこにあるのかを確認し、必要であれば前の単元や前の学年の内容まで戻ります。
また、一度できた問題もそれで終わりにはしません。
数日後にもう一度確認したり、数字や聞き方を変えた問題を出したりしながら、本当に自分でできるようになっているかを確認します。
私の指導では、
- できなかった原因を確認する
- 必要なところまで戻る
- 同じ内容を繰り返す
- 数日後にもう一度確認する
- 少し形を変えた問題にも取り組む
といったことを、その子の理解度に合わせて行っています。
また、市販の問題集だけでは十分に対応できない場合には、その子がつまずいている内容に合わせたプリントを作ることもあります。
必要であれば、その子専用のWEBアプリを作り、繰り返し練習できるようにすることもあります。
全員に同じ教材、同じ量、同じ順番で進めるのではなく、その子が「できるようになるために何が必要か」を見ながら、教材そのものも含めて調整していきます。
これは、一対一で指導するからこそできることだと考えています。

