勉強が苦手な子どもでも、やり方が合えば成績は上がります。 特に短期間での逆転合格や、大きな成績アップには、感覚だけに頼らず「再現性のある方法」が必要です。
この記事では、わたしが長年の指導で自然に取り入れていた方法と、それが科学的にも効果があるとされる6つのアプローチについてご紹介します。
特にわたしが重視しているのは、再現性とスピードです。 同じやり方で他の子にも通用するか、そして短期間で結果が出るか──。 その2点にこだわって組み立ててきた指導法を、今回あらためて整理しました。
1. スモールステップと繰り返し(分散学習)
※再現性とスピードの両方を高めるための基本的な戦略です。
人は一気に理解するのが苦手です。特に、勉強に苦手意識がある子ほど、一度に詰め込むと混乱してしまいます。
わたしの指導では、問題を細かく分けて、「今日はここまで」「次はこれ」と段階的に進めます。たとえば、文章題なら「文章を読む→図にする→式にする→計算する」と1つずつ確認します。
また、同じような問題を数日後にもう一度出題し、忘れかけたタイミングで繰り返すようにしています。これは記憶の定着を助けるだけでなく、段階的な理解を通じて無理なく進めることで、短期間でも効果が出やすく、他の生徒にも応用しやすい“再現性のある方法”です。
2. 具体から抽象へ(図や操作からスタート)
※小学生を中心に、抽象的な内容をわかりやすく伝えるための効果的なアプローチです。
抽象的な数式や概念をいきなり教えても、特に小学生には響きません。
わたしは、図、イラスト、ブロック、数直線、割合ならお菓子など、目で見て手を動かせるところからスタートします。
たとえば「速さ」の問題なら、まずはミニカーを走らせて距離と時間を体感させてから、式に落とし込む。図形の面積なら、色を塗ったり切り貼りするところから始める。
このように、目に見える「具体」から出発し、そこから少しずつ「抽象」へと導くことで、無理なく理解が進みます。
3. 誤答の活用(エラーベースド・ラーニング)
※失敗を学びに変えることで、自信と理解を深める指導法です。
間違いは成長のチャンスです。
ただ○×をつけて終わるのではなく、間違えた理由を一緒に分析します。「なんでこの式にしたの?」「この文章、どう読んだ?」など、ズレの原因を自分の言葉で言わせます。
そのうえで、数日後に同じ問題をもう一度出して、「今ならできるかな?」と再挑戦させる。
この“振り返り+再挑戦”のサイクルは、記憶にも自信にもつながり、限られた期間でも成果を出す上で非常に有効です。誤答を資源として活用するこの方法も、他の生徒にも使いまわせる再現性の高いアプローチです。失敗を恐れず、学びに変えていく経験は、長期的な学力の伸びに直結します。
4. 言語化・メタ認知(考えを説明する力)
※理解を深め、ズレを早期に修正するための重要な思考プロセスです。
「この問題、どう考えた?」と聞くと、意外と言葉に詰まる子が多いです。
でも、自分の思考を言葉にすることで、理解が深まります。わたしは「どうしてその式にしたの?」「このやり方、他の問題でも使える?」といった問いかけを常にしています。
説明することで、頭の中であいまいだった部分が整理され、「あ、こういうことか」と自分で気づける瞬間が生まれます。これがメタ認知の力であり、学びを自分のものにする重要なステップです。さらに、説明させることで理解のズレが早期に可視化され、指導スピードを上げることにもつながります。
5. 適度な成功体験(自己効力感)
※「できた!」という実感が、行動を変え、努力を引き出します。
「できた!」という感覚は、やる気を引き出す原動力です。
勉強が苦手な子ほど、「自分はダメだ」と思い込んでいます。だからこそ、1問でも正解できたら大げさなくらい褒めます。
「今日はここまでできたやん」「前より早く解けたな」と声をかける。それだけで、表情が明るくなり、「次もがんばってみようかな」と思えるようになります。
小さな成功の積み重ねが、「自分でもできる」という感覚を育て、継続的な努力につながります。こうした小さな成功体験は、早い段階で自信を生み出し、短期間でも目に見える変化を引き出せるポイントです。
6. ワーキングメモリの支援(思考の見える化)
※処理の負担を減らし、集中力と正確さを保つための工夫です。
ワーキングメモリとは、頭の中で一時的に情報を保ちながら処理する力。いわば“頭の中のメモ帳”です。
このメモ帳の容量には個人差があり、詰め込みすぎると処理ミスが起こりやすくなります。
だから、わたしの指導では「途中式は必ず書く」「図や表にまとめる」「印をつけながら読む」など、頭の中を外に出す工夫を徹底しています。
こうした“見える化”によって、ミスを減らし、思考を整理することができます。特に複雑な問題や文章題では効果的です。処理を外化することで混乱を防ぎ、テンポよく理解を進めることができるため、短期指導でも成果が出やすくなります。
最後に:理論と実践の一致
これらの理論のうちのいくつかは知らずに自然と取り入れてきましたが、後から理論で裏付けされたことで「やってきたことは間違ってなかった」と確信できました。
わたしが特に重視しているのは、指導の再現性とスピードです。 他の生徒にも同じように効果があるか、そして限られた時間の中で変化を出せるか。 教育理論を学ぶことはもちろん大切ですが、それを実際の指導でどう活かすかも同じくらい重要です。わたしは、理論と実践が結びついたときにこそ、生徒の変化が生まれると考えています。
これからも、経験と科学の両方を生かして、勉強が苦手な子どもたちをサポートしていきます。
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