【2025年最新版】滑り止め私大の入学金は返ってこない?

【2025年最新版】滑り止め私大の入学金は返ってこない?

私立大学の入学金は「入学しない場合も返ってこない」のが通例です。
しかし2025年、大阪府の要望と文部科学省の通知をきっかけに、返還や納付期限見直しの動きが始まりました。
制度の現状と今後の方向性を解説します。

目次

1. 入学金「返還なし」問題とは

大学受験では、私立大学の合格発表が早く、国公立大学の発表は1か月以上あとというのが一般的です。
そのため受験生は、本命校の結果が出る前に、滑り止めの私立大学へ入学金を納めて「席を確保」する必要があります。

しかし、本命の国公立大などに合格して私立大を辞退しても、納めた入学金は基本的に返ってきません。
授業料を先に納めていた場合でも、返還されないケースが少なくありません。

この仕組みが「二重払い問題」を生み、家庭に大きな経済的負担を与えているとして、見直しを求める声が全国で高まっています。

2. 滑り止めの私大の入学金はどうなる?

入学金が返還されない理由は、2006年(平成18年)の最高裁判決にあります。
この判決では、入学金は「入学できる地位を得るための対価」と位置づけられ、大学には返還義務がないと判断されました。

つまり、「入学する権利を買う費用」という扱いになっているのです。

一方で、近年は総合型選抜や学校推薦型選抜などの“年内入試”が拡大し、複数の大学に入学金を納めるケースが増えています。
こうした状況を受け、2025年には「制度そのものを見直すべきだ」という声が一気に広がりました。

3. 大阪府が国に要望 きっかけは吉村知事の経験

2025年春、大阪府の吉村洋文知事が自身の子どもの受験経験をもとに、
「入学しないのに入学金が返らないのはおかしい」と発言したことが大きな転機となりました。

大阪府教育委員会が行った「2025年私大入学金調査」では、以下のような結果が出ています。

  • 入学金と授業料の両方を支払った人:230人
  • どちらも返還されなかった人:45%(104人)
  • 「返還されるべき」と考える保護者:約70%

この結果を受けて、大阪府は2025年8月、文部科学省に対し
「入学金返還や納付期限の後ろ倒しを大学に求めるよう要望」を正式に提出しました。

4. 文科省の通知で大学に「負担軽減策」を要請

文部科学省は2025年6月26日付で、全国の私立大学に向けて
「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」(7文科高第491号)を通知しました。

この通知では、大学に次の3点を要請しています。

  1. 入学料の額や納付時期について、社会に理解を得られるよう説明すること
  2. 入学料の金額を抑制するよう努めること
  3. 入学しない学生の負担軽減策(返還・分割・猶予など)を講じること

さらに同年7月には「通知Q&A(考え方まとめ)」が公表され、
「返還義務は法的にないが、学生の経済的負担を軽減するために、大学ごとに柔軟な制度を設けることが望ましい」と明記されました。

これを受け、大学では分割納付・納付時期の後ろ倒し・条件付き返還制度など、
新しい仕組みの検討が始まっています。

5. 返還に動き出した大学も

通知を受け、関西を中心に返還制度を導入する大学が現れ始めました。

  • 桃山学院大学(大阪府):入学金23万円のうち18万円を返還(残り5万円は事務手数料)
     ※3月12日までに辞退した場合、理由は問わず
  • 美作大学(岡山県):国公立大進学者には入学金を全額返還
  • 文化学園大学(東京都):入学時納入金(77~97万円)のうち10万円以外を返還(2026年度入試から)
  • 新潟工科大学・新潟産業大学:同様の返還制度を導入予定

これらは全国的にも先進的な取り組みで、今後の広がりが注目されています。

6. 大学側の課題と現実的な壁

ただし、大学側には大きな課題もあります。
私立大学は国公立大学と違い、運営資金の約7割を学生からの納付金に依存しています。
そのため入学金を返還すると収入が減り、授業料の値上げや経営悪化につながるおそれがあります。

また、入学金の納付期限を3月末に後ろ倒しすると、
辞退者が増えて定員管理が難しくなったり、補欠合格者の調整が遅れたりといったリスクもあります。

文科省も「根本的な解決には国公立大学も含めた入試制度全体の見直しが必要」と指摘しています。

7. 教育者としての見解:制度に振り回されず「現実的な戦略」を

入学金返還の議論は教育の公平性の観点から重要ですが、制度がすぐに変わるわけではありません。
そのため、受験生と保護者が今できる最善の対策は、
「出願校のスケジュールと納付期限を早めに整理しておくこと」です。

家庭教師としての立場から言えば、
「滑り止めの入学金は返ってこない前提で動く」ことが現実的です。

ただし今後は返還制度を導入する大学が増える可能性もあるため、
「入学金返還制度の有無」も学校選びのチェックポイントに加えておくと良いでしょう。


まとめ

項目内容
現行ルール滑り止めの私大入学金は原則として返還されない(2006年最高裁判決)
2025年の動き大阪府の要望と文科省の通知により、返還・納付後ろ倒しの動きが始まる
先進大学桃山学院大・美作大など一部大学が返還制度を導入
受験生の対応制度改革には時間がかかるため、募集要項・納付期限を事前に確認すること

教育の機会は、経済的な事情で制限されるべきではありません。
この問題の本質は「受験の公平性」と「家計の安心」の両立にあります。
制度改革の動きを見守りながら、家庭としてできる準備を早めに進めていきましょう。


参考資料(2025年10月26日時点)

  • 文部科学省通知「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」(7文科高第491号、令和7年6月26日付)
  • 文部科学省「通知に関するQ&A(考え方等)」(2025年7月公表)
  • 大阪府教育委員会「2025年私大入学金調査」
  • 桃山学院大学「入学金返還制度」
  • 文化学園大学「入学金返還について(2026年度入試より)」

最終更新:2025年10月26日
(本記事は文部科学省通知および調査資料に基づき作成しています。最新情報は各大学・自治体の公式発表をご確認ください。)

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