【私立大学】学部・学科新設の審査基準を厳格化へ|少子化時代に向けた文部科学省の方針とは

【私立大学】学部・学科新設の審査基準を厳格化へ|少子化時代に向けた文部科学省の方針とは

文部科学省は、私立大学における学部・学科の新設審査基準を見直し、より厳格な運用に移行する方針を固めました。少子化の加速と定員割れの拡大を背景に、安易な学部新設を抑制し、大学経営の健全化と規模の適正化を図ることが目的です。

目次

新設学部の審査基準が「5割」→「7割」へ引き上げ

現在の制度では、学生数が定員の5割を下回る学部が1つでもある私立大学には、新たな学部・学科の設置が認められていません。
これに対して今後は、「定員の7割以下」に厳格化する方針です。

この新基準は、早ければ2027年秋の審査から適用され、2029年度に設置される学部・学科から本格運用される見込みです。

廃止計画があれば一部例外措置も

一方で、定員割れを起こしている既存学部について、具体的な廃止計画がある場合は例外的に新設が認められる可能性も示されています。
現行制度では、該当学部の募集を完全に停止してからでなければ新設できませんが、新方針では、廃止予定であり、かつ大学全体の収容人数が増加しないことを条件に、募集停止前でも新設が可能となるよう検討が進んでいます。

背景:少子化と私大経営の厳しさ

この見直しの背景には、進行する少子化と、それに伴う私立大学経営の悪化があります。

  • 2024年の18歳人口:約109万人
  • 2040年の推計:約74万人(32%減)
  • 文科省の推計では、大学進学者数は2026年の約63万人をピークに減少に転じ、2040年には約45万人、2050年には約42万人まで減少

さらに、日本私立学校振興・共済事業団の調査(2024年度入試、私立大598校対象)によれば:

  • 入学定員充足率が5割未満:43校(7%)
  • 入学定員充足率が7割未満:113校(19%)

また、私立大学の学校法人のうち約24%(136法人)が「経営困難」とされ、そのうち17法人(約3%)は「自力再建が極めて困難」と報告されています。

受験生への影響は?【現時点では限定的】

今回の制度変更は重要ではありますが、すぐに大学受験生全体に大きな影響が及ぶものではありません

  • 新基準は2029年度以降の学部設置に関わるため、現在の中学1~2年生以下が対象
  • 影響を受けるのは、主に定員割れが慢性化している一部の地方・小規模私立大学
  • 国公立大学、都市部の有力私大、中堅以上の大学にはほぼ影響なし

ただし、「新設学部だから入りやすい」「地元私大なら安心」という考え方は今後通用しにくくなるかもしれません。
特に、経済的事情などから地元にこだわりたい受験生にとっては、将来的に選択肢が狭まる可能性もあるため、最新情報に注意して進路を検討することが重要です。

今後の動きと方針決定の時期

2024年4月24日に開かれた有識者会議では、保育士や介護士など地域に不可欠な職種の人材育成を目的とした学部については、単純な基準では判断できないのではないか、という意見も出ました。

文部科学省は、このような現場の声も踏まえて議論を進め、2025年秋を目途に最終方針をまとめる予定です。

結論:制度の見直しは進んでいるが、「今の受験生」が慌てる必要はない

少子化時代において、大学の再編や淘汰は避けられない流れです。
とはいえ、今回の審査基準の見直しは、あくまで数年先の新設学部に向けた制度整備であり、過度な不安や混乱を招くものではありません

今できることは、保護者や受験生が「大学名」だけでなく、学部の将来性や大学全体の健全性にも目を向けること。
そして、変化の兆しを冷静に受け止めながら、「今どこを受けるか」だけでなく、「どこで4年間を過ごすか」まで見据えた進路選択をしていくことだと言えるでしょう。

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